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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)627号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人伊藤光彦の上告理由第一点について。

所論は、被上告人ら先代奈良吉の山田朝之助に対する賃料債務不履行を原因とする契約解除の意思表示は一定期間を定める催告を前提とすることなしに本件第一審口頭弁論期日においてなされたものであるから解除の効力を生じないとし、右解除の有効を前提として原審が上告人八木の買取請求権行使の無効を判断した点の誤りをいう。原判決の措辞妥当を欠くきらいがないでもないが、所論指摘の点の原審説示は、賃料支払期限の約定が毎年一月及び六月と定められていたことの認定判示(第一審判決引用)と併せて見ると、被上告人は先代奈良吉としてはしばしば山田朝之助に対し本件土地の延滞賃料について相当期間をもつて催告をしていたこと及びこれに対し右山田が催告の趣旨に従つて履行しなかつたことを判示するものと解され、叙上の判示事実は挙示の証拠関係に徴して肯認できるから、第一審口頭弁論期日たる昭和三〇年九月二七日の被上告人代理人の所論賃貸借契約解除の意思表示を有効とした原判決の判断は首肯できる。よつて、右論旨は、すでに前提を欠き採用できない。

また、論旨は、被上告人らは、第一審以来上告人らの不法占拠を理由とする明渡請求をしているが賃料請求はしていないというが、所論賃料請求は原審で予備的に請求されるに至つたものであつて、所論は当を得ない。

以上のごとく原判決には所論の違法は存しないから、論旨はすべて採用できない。

同第二点について。

所論は、ただ相上告人の上告理由中利益なものを援用する旨述べるが、上告理由の記載として具体性を欠き法定の方式(民訴法三九八条二項、民訴規則四九条参照)を具えるものとは認められず、論旨は、ひつきよう、上告適法の理由として採用するに足らない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柏原語六 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎)

《当事者》

上告人 八木正義 <外一名>

右二名訴訟代理人弁護士 伊藤光彦

被上告人 北村 弘

右訴訟代理人弁護士 田中一男

被上告人 山田田鶴子 <外七名>

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